アイ マイ ミー マイン

一人称の世界の中で孤独を感じ、周囲に無関心な少女が大学受験をきっかけに他者との関わり合いや変化していく家族の生き方を見ることにより、その内面的な変化を描いた作品。繊細な心理描写を自然な映像で表現している。

旅館を営む小林家の次女ふみ(悠城早矢)は、受験中の高校三年生。親しい同級生もいなく、どこかさめた少女だった。長男の兄 徹也(三浦誠己)は、恋人 志穂(菜葉菜)と駆け落ちをするとふみに伝え、家業は、ふみに任せるような言葉を残して去っていってしまう。
彼女は、そんな、ごたごたする実家を後に東京へ大学受験のために行くことになる。

受験のための宿泊先は、姉 綾子(中村優子)のアパートだった。東京に住む姉は、小劇団で女優を目指しており、ふみから見ると、とても異質な生き方をしていた。

大学での試験が終了したふみは、試験官の大学生にナンパされる。乗り気でなかったのだが、姉の劇団の公演チケットをアパートに忘れてしまい、強引に誘われ車で送ってもらうことになってしまう。しかし、アパートでチケットを探しているとき、無防備な彼女にその大学生は、襲い掛かる。

彼を拒否し、何とか逃げ切れたふみ。彼は、劇団なんかやっている姉のことをだめな人間だと言い放って出て行ってしまう。

その夜、姉の劇団の不思議な演劇を鑑賞したふみは、姉のヘンテコな役柄に不快な思いをする。姉より劇団員の彼氏を紹介されるが、とても冴えない男性であった。
姉の劇団のこと、彼氏のことを批判するふみは、姉とけんかをして東京を後にする。

東京で嫌な思いをしたふみは、実家へ戻ってきてもどこかギスギスしていた。さらに、旅館を継げという両親の態度もとても不愉快だった。

ふみの旅館は、宴会コンパニオンやマジックショーなどを行う庶民的な旅館だった。そんな時、ふみは、無理やり父親と一緒にマジックショーをやらされる事になる。

父親が演じるマジシャンに酔っ払い客が絡んでくる。客の要求に応えニワトリのまねをする新入社員と父親。その横柄な上司に向かってふみは「ブタ野郎」と言い放ってしまう。

新入社員は、そのことが原因でクビになってしまうが、ふみは、その新入社員から礼を言われ「そのままでいてね。大人になっても」と言われる。

その日、大学から合格通知が届き、兄が戻ってくる。兄は、彼女と結婚して旅館を継ぐという。

その夜から兄の恋人 志穂は母親と食卓の手伝いをする。兄は、もとのさやに戻り、家族と暮らすことを決める。

今まで家族の一面しか見ていなかったふみは、皆違う一面を持っており、様々な生き方をしていることを知る。そんな家族を見ていると自分がどこへたどり着くのか、どこに行こうとしているのか分からなくなってしまう。ふみは、夜の街を歩き続け家出しようと思う・・・。

多感で、たった一人で生きていると感じていたふみ。彼女は、受験をきっかけに家族、同級生、さまざまな大人たちを見る中で、世の中の暖かさと危うさを知る。
また、思春期の孤独感、枯渇感をリアリズムを追及した映像で、その世代の感受性を等身大で描いている。

こういう世代が主人公で、何でもない日常の中での内面的変化みたいな作品をよく見ているよなぁ。と感じてしまうこの頃なのですが、同じものを見ていても、同じ出来事があったとしても、10代の頃の感受性は、まったく違う情景に見せていたように感じます。

僕たちも年齢を重ねることにより「そのままでいる」のだろうか「変わってしまっている」のだろうか。でも、ふと見る一瞬の光景を見た時「そのままでいる」感受性は誰もが持っていると思うし、いつまでも持っていてもらいたいと感じるかな。
(まあ、成長していないという意味も含まれるようにも思いますが。笑)

山形国際ムービーフェスティバルで審査員特別奨励賞を受けた渡辺賢一監督のスカラシップ作品。

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