「誰も知らない」の是枝監督の時代劇作品です。主演は、岡田准一、共演は、宮沢りえ。元禄十五年。江戸の貧乏長屋で起こる物語。
敵討ちに上京した青年の物語。あたたかな長屋の庶民たちと過ごす青年期を回想録のように描きます。
父の敵を討つために信州から江戸へ出てきた若侍 青木宗左衛門<宗左>(岡田准一)は、なかなか仇相手が見つからず、もう二年も長屋暮らしをしている。
早く父の仇を取り、剣術師範だった父の道場の繁栄と名誉回復をしたいのであるが、長屋仲間に「仇を見つけた」と適当なことを言われ、風呂屋や飲み屋を連れ回されて、おごらされ生活は困窮し、さらに郷里からの仕送りも途絶えがちな状況であった。
そんな宗左は、寺小屋を開き算術などを教えて暮らしているのであるが、向かいに住む未亡人 おさえ(宮沢りえ)に、ほのかな恋心を抱いており、おさえの姿を見るのがちょっとした楽しみだった。
そんなある日、おさえの一人息子、進之助に剣術を教えて欲しいと頼まれ、手ほどきをするのであるが、そこで同じ長屋のそで吉(加瀬亮)にこてんぱんに負かされてしまい、実は剣術ができないことが露見してしまう。
はたして、剣の腕前が全然いけてない宗左に敵討ちができるのであろうか・・・。
宗左が江戸で過ごす青年期が、彼の人生において、目的を追いかけながらをも時間をもてあまし、模索する時代。それは誰もが過ごした時間ではないだろうか?夢を追いかけて上京してこういった時期を過ごした人も多いかもしれない。
宗左は、敵討ちが終われば信州に帰る身。普通であれば江戸で暮らすことのない立場であるのだが、「敵討ち」という理由で江戸の長屋で暮らすことになった。
それは、彼の人生において懐かしくも何かを追いかけていたとき・・そういう時代になるのであろう。
この映画を見たとき、思い出したエピソードがあります。それは、学生時代に絵を教えてもらったことのある高齢の画家の先生です。
その先生は、地元では、著名な画家であったのですが生活は質素で老齢の画家という感じでした。
若い頃、東京の有名な画家の弟子をしていて、住み込みで働きながら絵を学んでいたとのことでした。東京での話や画家という事で街の大きな橋を設計したとか、現場監督をさせられたとか、今では考えられないような話を絵の教室で聞いた記憶があります。
その先生は、師匠の画家が亡くなった時、娘さんからワインのビンをもらったそうで、絵を習っていたアトリエにそのビンは、置いてありました。
きっと、その高齢の先生は、そのワインのビンを見るたびに上京していた若い頃の貧しくもひたむきに何かを追いかけていた若き日の自分を思い出していたのでしょう。
宗左もいずれは、信州に帰り家督を継ぎ暮らす立場。
敵討ちのために江戸にいた頃をいつか信州の地で回想することでしょうし、映画というもの自体がむしろ回想録のようにまとめられると思います。
若い頃、江戸(東京)にいたときの何かを求めて追い続けた「宗左と高齢の画家の先生」の姿が重なって見えるように感じ、ふと思い出してしまいました。


