ララピポ

「この世界には二種類の人間しかいない。一生地べたに這いつくばってる人間と、そこから抜け出し高く上りつめる人間。」
そんなセリフから始まるこの映画は、東京の下層サブカルチャーの中で生きる人々を「笑い」というデコレーションで包み、エロチックなエンターテイメントとして楽しませてくれる群像的な物語。

果てしない妄想を膨らませ、痛い現実をかみ締める街が東京という街なのかもしれない。

栗野健治(成宮寛貴)23才は、風俗スカウトマン。
渋谷のセンター街で、そのイケメンを活かし巧みな話術で女たちをスカウトする。
そして毎晩、女を連れ込んではセックスし、ウソで固めた言葉で騙し、セクキャバ、抜きキャバ、ヘルス、AVへと送り込んでいる。
この世界は、風俗の女をどれだけ抱えているかで決まる。人気AV嬢を抱えたら上り詰める事ができるのだ。

マンションの下の階に住むフリーライターの32才、杉山博(皆川猿時)は、「何であんな奴が毎晩良い女を連れ込んでいるんだ!」と羨ましがっている。
彼は、女子の気持ちが理解できないマイワールドを持つ、いわゆるキモオタ。
会社員をしていたが、振られても色んな女子社員に告白を続けてたら、会社に居づらくなり辞めてしまう。
それから、引きこもりになってしまった。
さらに収入も激減して、辛うじてライターの仕事をしている。

ここ数年、生身の女と話したことも無い。
しかし、ある晩、居酒屋でロリータファッションの26歳、玉木小百合(村上知子:森山中)と意気投合し、彼女の家で久しぶりにセックスすることができる。
小百合は、声優を目指して勉強していると言っているが、実は、居酒屋で男をナンパして家に連れ込みビデオで隠し撮りして、マニアックなデブ専門裏ビデオとして売りさばいている。

デパート勤務の20才、佐藤トモコ(中村ゆり)は、センター街で栗野にスカウトされる。
はじめは警戒していたのだが、地味で目立たない彼女は、今まで扱われたことの無いような栗野の優しさにメロメロになってしまい、言いなりになる。
そして昼間は、デパートに勤めながら、夜は風俗で働かされるが、やがてAVの世界へと堕ちて行く。

内気なカラオケ店員の26才、青柳光一(吉村崇)は、SF妄想オタク。
家に帰るとスーパーヒーロー「キャプテン・ボニータ」に変身して近所を徘徊している。

彼の妄想では、地球の上空に「ステーション」が存在し、交信しながら邪悪なエロで汚れきった女たちを更生させて行くのが使命なのだ。
しかし、やっている事は、犬に石を投げたり、隣の若妻(インリン・オブ・ジョイトイ)を覗き見し、汚れきった(エロ)地球を浄化すると興奮しながら昇天し・・・妄想のなかで世直しをしている。

青柳の近所に住む、佐藤良枝(濱田マリ)は43才の主婦。ゴミ屋敷に神経を病んでしまった旦那と住んでいる。
欲求不満だった彼女は、街でスカウトされるとセックスがしたいために、家族に内緒で熟女AVに出演するようになった。

そして、下流の生活をしている登場人物のそれぞれの人生の断片が交差していく・・・。

テレビのニュースや街中で見る「下流社会」と言う残酷な差別が持つ問題とか事件とか・・・こう言ったポップでコミカルな物語じゃないと、ちゃんと見れないかもしれない。
僕たちは、「誰かと自分を比べる」その差で優位性や豊かさを測って生きている。と言うよりそういうルールの社会に生まれてきた。
その社会を肯定も否定もするわけでは無いが、この映画の登場人物たちのような下層の社会で生きてる人はリアルに増えていると思う。

でも、この物語を見終わった後は、少し哀しく、そして、アンダーグランドに這い蹲りながらも逞しく生きる登場人物が愛しく思えるし、温かい気持ちになる。
自分も含めて、それでも、みんな生きているんだと思う。笑うしかない。

成宮寛貴のイケメンでチャラいキャスティングは、彼にとっては大きな冒険かもしれないが、この作品のなかではとても馴染んでいた。
また、堕ちて行く女でありながら、本人はまったく自覚は無くて、頭の中では美しいイメージに翻訳してしまう中村ゆりも、とても可愛く見える。
さらに、見たいと思う人は少ないかと思うけれど、森山中の村上知子がベッドシーンに挑戦したと言うことでも、ちょっと話題になった作品です。

普通の人間が、なぜ異質な生き方になってしまったのか。そして、下流に生きているのか。
それは、結果だけ見たら「何故?」と思ってしまう事だけど、登場人物が、田舎の親と話したり、そこに至った経緯、生い立ちなど、自然に映像として入ってくる事により、理解する事ができるし、ストーリーを重厚にさせている。

原作は、人気作家、奥田英朗の同名小説で、「嫌われ松子の一生」の監督 中島哲也が脚本を手掛けている。

あと、タイトルの「ララピポ」って、どういう意味?と思う人も多いと思うけれど、最後に答えが分かります。

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