堀川中立売

京都の「堀川中立売」を舞台にしたSF作品。いわゆるパラレルワールド的な物語ではあるんだけれど、「京都」という街は、実は色んな魔物が住んでいて、人々が知らない色んな事が起こっている・・・と思わせてしまうような歴史の深さというか謎めいた部分を持っていると思う。
そんなファンタジーというか妄想を広げてくれる映画。

また、格差社会、少年犯罪、報道被害といった重いテーマをパロディで笑い飛ばし、テンポの良い作品に仕上がっている。

ストーリーは、地球が魔物に支配されようとする危機を察知したギャラクシー・フォースのリーダー(堀田直蔵)が安部清明と名乗り、魔物を退治するために京都で式神をスカウトする。
この安部さんがヤクザのような風貌で、とても陰陽師には見えない。

安部さんが選んだのは、女に養ってもらっている「ヒモ王子」信介(石井モタコ)と働かないくせに講釈好きな「ホームレス男爵」ツトム(山本剛史)。
彼らをを1日千円で雇い、まずは犯罪者を監視するサイトを一日中見ているように指示する。

そのサイトは、出所した少年犯罪者を監視するもので、かつて福岡で貸し金業者の社長を惨殺した「正義感殺人事件」の犯人 寺田(野口雄介)を追跡していた。

寺田は、過去の犯罪歴を隠して働いているのであるが、マスコミ報道やネットで情報を知った悪意を持った人たちに写真を撮られたり、興味本位で追い回されるようになる。
また、高校生によるホームレス退治がマスコミで賞賛されたりなど、歪な風潮が社会に蔓延していく。

これらは、大妖怪・加藤the catwalkドーマンセーマン(秦浩司)による仕業であった・・・。

なぜ重いテーマがパロディなのか?と考えてみたわけなんだけれど、人間は、シリアスで深刻な状況に置かれるとネガティブな考え方に流されてしまう本能を持っている。
また、「勝ち組。負け組」という言葉があるように、僅かながらの地位や経済的な優位性で他人を見下す考え方も根付いている。

そういったものに唯一というか絶対的に対峙するものが「くだらない笑い」だと思う。

この映画では、「マスコミ、金、差別」の権化のような地球征服を企む妖怪に立ち向かうヒーローが、格差社会「負け組」の象徴である「ヒモ」と「ホームレス」という痛快な比喩で設定され、現代社会を皮肉っており、このような社会的な問題意識をパロディという形をとったメッセージである。

さらに、京都の日常的な町の写し方や、信介のゴロゴロした怠惰な生活感。心地よいテンポのストーリー展開など、非常に細かく考えられたシナリオと演出で成り立っている。
見てみないと分からないと思うけど、場面展開も天才的な職人技のように思う。

あと、「悪」の描き方に共感を持てた。一応、対象として「大妖怪・加藤the catwalkドーマンセーマン」が悪の親玉としては存在しているが、本当の意味での「悪」というものが、人を痛めつける心だったり、人を追い詰める冷笑といった悪の心と位置づけられている。(それがゾンビみたいな感じにもなっているけど)

結局、世の中が破滅の方向に行くのは、人間の心次第だし、そういう意味では、人間の心ほど恐ろしいものは無い。
実際にゾンビやエイリアンのせいで人が殺されることは無いけど、恨みや欲望、憎しみで殺人事件が怒ることは日常茶飯事だし。
なので、「人々の悪意による歪な風潮」というものを倒すべき対象としているところが「深いなー」と感心させられる。

そんなシリアスなバックボーンを感じさせながらも、「ヒモ」と「ホームレス」が二着で1000円のバスローブをに身を包み魔物退治に奔走するという、くだらなさ満載のエンターティメントに仕上がってます。

おすすめ度