世界的な評価を得ている日本人コンテンポラリーアーチスト「ピュ~ぴる」のドキュメンタリー映画。
性同一性障害として違和感を感じる自分の体。そして、自分が求める理想像へと昇華されていくアート作品。
この映画は、「ピュ~ぴる」の友人である松永大司が8年間にわたり、撮り続けていた映像を映画化したもので、日常的で普通の生活の中での軌跡みたいなものが描かれている。
漫画喫茶でバイトしながら、奇抜なコスチュームでクラブへ行っていた10代。しかし、次第にその独創性あふれる衣装が話題になりアート作品として認められるようになる。
そして、「ピュ~ぴる」は、恋をするが・・・それは、実らぬ恋であった。
失恋を経て、去勢手術、横浜トリエンナーレでのパフォーマンスまでが映画に収められている。
心と体が一致しないものを解消するようにコスチュームを作り続けていた「ピュ~ぴる」は、作品を作る中、また多く人から関心が寄せられる中で次第に自分が生きた証拠として作品を作るようになる。
その深く、重い背景の中で作られる作品は、ポップでありながら運命と格闘する強さを感じさせる。
そんな「ピュ~ぴる」を取り巻く家族は、いたって何処でもいそうな人々だ。
父がいて、母がいて、兄がいる。
父は、「まさか自分の息子が性同一性障害になるなんて思わなかった」と戸惑い、驚いた頃を述懐する。
母は、「せめて、奇抜な衣装を着て家からクラブへ行くのはやめて欲しかった。駅のトイレとかで着替えてくれればよかったのに」と当時のことを話す。
兄は、「性同一性障害という事を自分に打ち明けてくれた事があった。でも、その時、それは肉まんが好きか、あんまんが好きかの違いぐらいじゃないの。と励ました」と当時の頃を思い出す。
愛する家族がいて、愛してくれる家族がいる。
「ピュ~ぴる」の工房は、トタンで出来た小屋。ここで、ファンタジーでポップなニット作品や横浜トリエンナーレで公開された折鶴のオブジェが生まれた。
ある日、ニット作品を庭で着てみる。なかなか身体にフィットしない衣装を兄に手伝ってもらい微調整してみる。
それを、ジッと珍しそうに見つめる祖母。
そんな、普通の風景の中で評価される作品が生み出される。
「ピュ~ぴる」の言葉を借りると「宇宙的でない」、「自然的でない」身体とこころを持ってしまった自分。
普通の女性なら手が届く事が永遠に届かない現実。
遥か遠くに見えるものは、性別を超えた愛。生きている限り、追い求めるもの。
横浜トリエンナーレで折鶴のオブジェを見たは母は「これを作ったのが自分の息子だと自慢したい」と言う。
「ピュ~ぴる」のすべてを曝け出す映画であるとともに、その家族の物語でもある。




