新海誠 監督の連続短編集映画。「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の三部作構成で描かれているアニメーション作品。
秒速5センチメートルとは、「桜の花の落ちるスピード」で、作中すぐに分かる。
本作品は、この「スピード」がテーマで、登場人物たちの思春期を中心に、小学生から青年期までの物理的な距離、心の距離、生きるスピードの距離による二人の変化が描かれる。
東京の中学校に通う遠野貴樹(声:水橋研二)は幼馴染であり、両想いであった篠原明里(声:尾上綾華)と文通をしている。
小学生の頃、二人ともグランドで遊ぶより図書館で本を読む方が好きだった。そんな、二人が幼いながらも両想いになるのは自然な事だったのであるが、中学進学を前に明里が栃木へ転校する事になってしまう。
しばらくしてから「私のこと覚えていますか?」そんな書き出しの手紙が明里から来て、それ以来お互いの日常を綴って文通を続けていた。
東京と栃木。少し遠出したら行ける距離だ。そんな距離感で、毎日のできごとを送ることでお互いの距離感を縮めていた。
しかし、今度は貴樹が転校する事になってしまう。転校先は、鹿児島だ。
栃木と鹿児島。これだけの距離があると、会う事も困難であるし、果たして大人になるまでの時間、今の気持ちを保ち続けられるかも分からない。
貴樹は、鹿児島に転校する前に、東京から栃木まで明里に会いに行く事にする。
部活を休んで夜7時に岩舟駅で待ち合わせをする。
しかし、当日路線は雪でかなり乱れてしまい、駅に着いたときは11時を過ぎてしまっていた…。
数年後、鹿児島 種子島の高校に通う澄田花苗(声:花村怜美)は、遠野貴樹に心を寄せていた。
いつも、貴樹が弓道部の朝練の終わる頃を見計らって待ち伏せしたり、原付通学の帰り途、貴樹の原付をチェックして、コンビニで買い物がいっしょになるように偶然を装ったりしている。
何とか卒業までに告白したいと思っているのであるが、貴樹はいつも何かを考え遠くを見つめている様だった…。
十数年後、遠野貴樹は東京の大学を卒業して、東京で働いていた。篠原明里は、故郷に帰り結婚のための準備をしていた…。
同じ時間を同じように歩む事ができたら、どんなに幸せなんだろうか。と思う事がある。
しかし、あの時、同じ場所で同じ気持ちであったのに空間的な距離や、生き方のスピードで人の心は変化していく。
そんな非情で現実的な「距離」「スピード」で変わってしまう二人の関係。
「いつでも探しているよ どっかに君の姿を」(One more time, One more chance )
山崎まさよしの歌をテーマ曲にして、誰にでもありそうな「告げられなかった」思い出をフラッシュバックのように描く。
三部作に分かれているわけだけれど、それぞれ、貴樹と明里、花苗、貴樹と、その距離を追い求める立場の視点からの物語になっている。そして、振り返った現在の自分の位置から計ると、それ以上踏み出せない過去だったり、ほのかな思い出だったりする。
特に貴樹の立場から考えると、中学生の頃に激しくお互いを思い合うような恋(それは物理的な距離がそうさせたともいえるけど)をしてしまうと、それ以上進めないと言うか、大人になるにつれての喪失感は、軽く鬱になりそうなくらい衝撃的かもしれない。
また、コントラストの効いた美しい背景は、非常にリアルなロケーション設定をしておりウェキペディアでも紹介されています。
DVDに収録されていた新海誠インタビューで、遠野貴樹の声に水橋研二を選んだのは、「月光の囁き」と言う映画を観て印象に残ったからといっていたけど、この映画は僕も大好きです。
相手役のつぐみは、紀子の食卓などにも出演して正統派の女優だったけど、今はAV女優になってしまいましたね…。




