風立ちぬ

もう随分前に見た作品になるのだけど感想を書きました。この作品は普通に良いと感じたので、面白いレビューがかけないと思います。すみません。
劇場には、宮崎駿の引退が報道された直後だったので満席の劇場で鑑賞でした。

作品は、珍しく名古屋が主な舞台のひとつとなっており、名古屋に住む僕にとって、大曽根の三菱工場、各務原の自衛隊基地という、近くの場所が舞台ということもあり感慨深いものがありました。
実在の人物をモチーフにした作品ということもあり、名古屋という地方の、この場所で戦争の時代に繰り広げられた設定ということが幾つもの歴史を重ねて形作られたものという事を実感する事ができた。

また、ものづくりをしている人には、ぜひ見て欲しい作品だと思います。

というのは、宮崎駿自身がアニメ映画を作る立場とオーバーラップしているのではないかと感じるほど、内面との対話というか自問自答の葛藤の中から「生み出す苦しみ」を味わった者しか理解できない事を飛行機作りを通じて表現しているから。

「ものづくり」って、制作した本人しかわからない微妙な機能や、全体のバランスのためにあえて機能を省いたりなど、完成度が高く、まとまりのある製作物(制作物)は、考え尽くされた結果で、誰も気付くことが無いようなものが多い。

そんな、孤高な作り手の立場を代弁しているようにも感じた。

また、主人公 二郎が幼い頃から夢見ていた飛行機というものを作る純粋な気持ちを現実のものとするには、この時代は「戦争」に使われる戦闘機しかなかった。

平和を善。戦争を悪。とされるものであるが、飛行機というもの自体は、善でも悪でもない。
しかし、この時代に飛行機作りという夢を追いかけることは、戦争に加わることになる。

時代によって「夢」というものは、過酷なものであり、そういった歴史を冷静な目で見るとともに、二郎の夢の世界では、カプローニとの対話のシーンで表現する事で作品の輪郭を美しくファンタジーなものに仕上げている。

さらに、この作品は「悲恋」とも言える二郎と美しくも薄幸な菜穂子の物語も描かれている。
この恋愛は、小説家 堀辰雄の「菜穂子」をモチーフとしており、病弱な彼女は二郎のためにいつも美しく凛といようとする。
そして、迫り来る別れを覚悟しつつも二人は結婚するのである。

明日がどうなるのかわからないこの時代に飛行機作りにすべてを掛けた二郎。その二郎を懸命に愛した菜穂子。
「今」を懸命に生きる二人の姿(この時代の若者はそう生きるしかなかったのかもしれないが)に心が打たれる。

松任谷由実の「ひこうき雲」の曲に合わせて、二人の人生は、飛行機のように青空を舞い飛んでいく。
それは、美しくも儚いものであるかもしれないが、いつまでも眩しく光を放っているように感じる。

人生を俯瞰して見た時、我々も同じような人生に見えるのであろうか。

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