愛のむきだし

盗撮カメラマンがカルト教団の信者になってしまった妹を助け出したという実話に基づいた体験を園子温監督が独特のワールドで仕上げた異質な純愛ファンタジー。

映画では、義理の妹に恋をした盗撮カメラマンがカルト教団から義妹を命がけで救おうとする。登場人物のキャラクターづくりや背景にマニアックなほど手が混んでいて、その生い立ちや経緯だけでDVD一枚(110分ほど)が終わってしまう。
さらに全編は237分と言う見ごたえたっぷりの長編に仕上がっている。

ストーリーは、カトリック信者の父(渡部篤郎)と母(中村麻美)のもとで平和な暮らしをしていたユウ。
しかし、ユウが幼い頃に母親は亡くなってしまう。
「このマリア様みたいなお嫁さんを見つけるのよ。そうしたら私に紹介して」という言葉を残して。

父は母を失ってから神父になり、ユウ(西島隆弘)は、小さな教会で優しい父と二人で暮らす平和な日々であった。
しかし、ある日、カオリ(渡辺真起子)と言う女が父に付きまとうようになる。
始めは拒否をしていた父であったが、次第にカオリのむきだしの愛情表現に惹かれて、教会を離れて家を借りて一緒に暮らすようになる。

たが、カオリは、窮屈な生活に嫌気がさし、数ヶ月もすると新しい男を作って出て行ってしまった。
父は、精神の安定が保たれなくなりユウに罪の懺悔を毎日強いるようになってしまう。

大きな罪を告白した時に激怒した父の姿に昔の姿を垣間見えることで愛を感じる、ユウは、もっと罪をつくるために不良仲間に入るが、さらにもっと大きな罪を作ろうと、エロの師匠に弟子入りし盗撮写真をはじめる。

直向きに盗撮の腕を磨き、その鮮やかなテクニックに不良仲間たちは魅了されて行き、いつしかグループで盗撮を行うようになっていく。

そして・・・そんな時、コイケ(安藤サクラ)という怪しい女が付きまとうようになり、ユウたちの盗撮の現場をビデオに収めたり、監視するようになる。
ある日、不良仲間たちと誰が一番の盗撮写真を撮ったか勝負をすることになる。罰ゲームは、負けたら女装して街を歩き、女性に告白をしてキスをしなければならない。

案の定、ユウは、負けてしまい、女装をして街を歩いていると女子高生が集団に襲われそうになっている場面に出くわす。

ユウは、彼女を救おうとして戦うのだが、その女子高生も強かった。
そして、彼女に偶然かぶせられた白いレースの姿が・・・母が言っていたマリア、ずっと探していたマリアに見えた。
暴漢たちを追い払うと彼女は、ヨーコ(満島ひかり)と名乗った。

そして、罰ゲームの約束どおりユウは、告白をして、彼女にキスをする。ユウは、ヨーコから名前をたずねられ「さそり」と名乗る・・・家に帰ってからもヨーコのことが頭から離れない。
一方、幼いころから父親から虐待を受け、男性不信に陥っているヨーコは、女装とは気付かずにさそりに恋をしてしまう。

しかし、これらの出来事は、すべてコイケが裏で動いてユウたち家族をカルト教団へと引き込むための策略であった・・・。

また、ヨーコは、ユウの高校に転校し、同じクラスになる。さらに、父親がカオリとよりを戻し結婚したいと言い出す。そして、ヨーコは、カオリの血の繋がっていない連れ子だった。何とユウとヨーコは、兄妹として一緒に住むことになるのだ。

しかし、今度はコイケが転校生としてクラスにやってくる。そして、ヨーコに近づき、ヨーコはコイケの事を「さそり」だと思いこみユウの家族に頻繁に接触するようになり、魔の手が近づいてくる・・・。

テーマ曲である、ゆらゆら帝国の「空洞です」がアンダーグラウンドの雰囲気を醸し出す。
また、ゼロ教団の合宿研修でコイケが信者たちに「空洞」を思い浮かべるものを言わせる場面があるが、ユウが「愛」と答えるのも、この作品の一部分を指している。
彼にとって、教団に潜伏してまで救おうとしている相手であるヨーコがいなければ、「俺は空洞」なのかもしれない。
それに、大事なことは他人から見たら「無意味なもの」だったりするのだ。

「愛のむきだし」とあるように、主人公が映画の中で、愛とはむきだすものであるという事を知る訳なんだけれも、その愛は歪んでいて異質である。
しかし、愛とか幸福というのは、本来は相対的なものでは無く、人それぞれだと思う。むしろ、テレビCMとかで見る標準化された「理想的な愛とか家族」の方が嘘くさい。

また、キャスティングがすこぶる良く、演じる以前に、それぞれが持っている素養が配役に組込まれているよう。
例えば、西島隆弘の演技は、大げさで舞台っぽく感じるんだけれどユウを演じることにより、コミカルで微笑ましいキャラになる。
置かれた立場で考えると、コミカルさが無ければシリアスすぎるし、痛すぎてしまう。この辺りの配役はすごいと思う。

しかし、「盗撮カメラマン」という設定からして、そうなんだけれどストーリーのベースに流れているのは、ブラックコメディであり、笑ってしまう。
主流にはなりえない作品ではあるけれど、「オタク」から支持されている作品だそうで、僕も支持したい。

また、この作品のダークサイドを存在感ある演技で際立たせ評価の高かったコイケ役の安藤サクラ(第31回『ヨコハマ映画祭』助演女優賞。第24回『高崎映画祭』最優秀新人賞)は、俳優の奥田瑛二とエッセイストの安藤和津の娘だそうです。

で、ヨーコ役の満島ひかりは2010年に映画監督の石井裕也と結婚している。(何か悔しい。笑)

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