ぐるりのこと。

ちょっとだらしが無い男、佐藤カナオ(リリーフランキー)は、本業は絵描きなんだが、生活のために靴直しの仕事をしている。
大学の日本画出身で、ちょっと芸術肌で、ゆるい感じ。

一緒に暮らす翔子(木村多江)は、しっかりもの。
小さな出版社の編集者として働いている。
彼女は、何でもきちんと決めたがる性格で、セックスの一ヶ月の日程も決まっている。

ある日、カナオは、テレビ局に勤める先輩 夏目(木村祐一)から法廷画家の仕事を紹介される。

法廷の慌しい中で、短時間で被告などの様子を描く、新聞社の仕事だ。
芸術としての絵を描くわけではないが、画家としての仕事である。
そして、今までよりは、少しは安定した収入を得られるようになる。

そんな頃、翔子が妊娠する。二人は、これを機に結婚する事にする。

式を挙げない二人の結婚祝いに、不動産屋を経営する兄 勝利(寺島進)は、兄夫婦と子供、母(倍賞美津子)と一緒に中華料理屋で祝ってくれた。
店の中で、ぐずる兄の子供を折り紙を作り、あやすカナオの姿を見て、翔子は幸福だった。

しかし、生まれた子供は亡くなってしまう。

子供が亡くなってから、翔子は、心の安定が保てなくなり、仕事で小さなトラブルでも傷つくようになってしまう。
相変わらず慌しい中、法廷画家をしているカナオは、意気消沈する妻を見守っていた。

翔子は、何かを変えようと引越しをする。引越しの日は、雨になってしまった。
荷物を整理していると、夫が描いた子供の絵を見つける。
「子供が生まれて嬉しかったんだ・・・」
感情の表現をあまりしない夫の気持ちが、なかなか理解できない。

翔子は、仕事の新刊のイベントで、ちょっとしたことで泣き崩れてしまったりし、居たたまれなくなってしまう。
段々と心が壊れていく、うつになっていく。
彼女は、仕事を辞め、心療内科で治療を受ける。

時代は、バブル経済がはじけ、羽振りが良かった兄 勝利も借金をつくり、家族で、実家に転がり込んでくる。
翔子の誕生日ということで、実家に行くが、台所で兄嫁(安藤玉恵)から、翔子が心療内科に通っているので、息子の幼稚園の面接に影響があるとデリカシーの無い事を言われる。

そして、居間では、お金と住まいの件で、兄嫁と母親の口論が始まる。翔子は、突然笑い出し、心が病んでいく。
カナオは、兄の住宅販売のイラストを頼まれ卓袱台で描く・・・。
その絵は、ボロボロの家の前でみんなが笑っている家族のイラストになっていた。

台風の日、カナオは、胸騒ぎがして、仕事を早々と切り上げ、土砂降りの中、帰ってくる。
妻は窓を開けっ放しにして、ベランダに座り、ずぶ濡れになって外を見ていた。

話しかけると、泣き出してしまい、妻は言う。
「ちゃんとしたかったけど、ちゃんとできなかった」

バブル後半から、9.11 テロまでの、ある夫婦の10年の物語。

また、裁判の中で、オウム真理教裁判や、幼女殺人事件裁判などで、時代の様相と様々な人間模様が節目として、10年の時の流れをあらわしている。
多かれ少なかれ、バブルから21世紀の間に、社会も家族も、様々な経験をした。

そんな時代の流れのなかで、一緒に暮らし、共に生きる夫婦。
色んな事がありながら、ややこしいこともあるけれど、いたわりと係わり合いで、再生していく普通の家族の物語

また、リリーフランキーは、インタビューでこの作品を次のように評している。
「おかしいんだけどおかしいだけじゃ済まないし、シリアスだけどシリアスでは済まないし、これが本当の現実だなって。こうしていきながら、確かなものをつかんでいくことが幸せなんだろうなと、僕は思いました」

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