聖職者が色欲におぼれ、それを近くで見る若い修行僧が、行き場のない現実と自身の欲望の矛盾に苦悩する物語。
しかし、僧侶と言えば聖職者なのに女房もいれば、愛人もいたりする。聖職者と言う体裁があるから、色に溺れたら手に負えないのだろう。
物語は、ある寺の襖絵を有名な襖絵師が描いた。雁の絵だ。
仕上げの時に、襖絵師がが妾 里子(若尾文子)を連れて来る。住職の慈海(三島雅夫)はその妾の美しさに目を奪われる。
しばらくして、妾の事を慈海に頼むと言い残して、襖絵師が亡くなる。
実家が貧しい膏薬屋の里子は、住職 慈海の妾になる事になった。
慈海は、この妾に夢中になり、当時としてはハイカラなダブルベッドを買い部屋に置き、さなさがら夫婦の寝室のようにする。
さらに、寺に篭り里子と過ごす事が多くなり本山への参詣も休みがちになっていく。
この寺には、修行中の慈念(高見国一)が住んでいた。慈念は、貧しい家の出だが優秀なため、慈海が引き取り学費を出して中学に通わせていたのだ。
慈海は、里子の肉体に惚れ込み怠惰な生活をするのだが、自分の乱れた生活は棚に置いて弟子の慈念を厳しく躾ける。
そんな慈念に対して、貧しい家庭に生れた里子は、いつしか同情をよせるようになった。
慈海の言うままに従う慈念であったが、心の中では、住職 慈海が里子を妾にする現実に憤りを感じるが、自分の中にも、里子に対する欲情が込み上げて来る事に苦しむ。
里子に対して慈念が鳶(トビ)の巣の話をする場面がある。
「あの木の上に鳶の巣があることを知ってますか。樹の穴の中に鳶が捕まえてきた蛇や獣や魚が入っていて、どす黒くドロドロ渦巻いている」
そんな、表現に里子は、耳をふさぐが、それは、出家した身でありながら怠惰な僧侶の現実と自身の心の中を比喩したものなのであろう。
また、この時代の作品にしては、カメラワークのセンスが良く、ストーリーのテンポも良い感じで、完成度としてはかなり高い作品です。



